すっかり秋となり、朝晩は冷え込むようになった北海道ですが、今年も夏は非常に暑かったですね。近年の夏は猛暑が増え、かつての冷房不要な涼しさとは様変わりしています。
世界各地で気候変動の影響が顕著になる中、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されています。この国際的な17の目標には、環境保護や気候変動対策も含まれています。
SDGsと日常生活の関連性を分かりやすく伝えるため、今回「地球環境と気候変動」をテーマにした講座と「グラスガーデンづくり」ワークショップを開催しました。本記事では、環境問題への理解を深めるこのイベントの模様をお伝えします。
身近な体験から生まれた、気候変動への取り組み
今回講師を務めるのは、東神楽町地域おこし協力隊の松江佳月さんです。

松江さんは昨年の9月協力隊の活動中に熱中症に。この経験から、北海道出身の松江さんは北海道の暑さに対してより強く異変を感じていました。このことがきっかけの一つなり、気候変動について関心を持った松江さんは、「2050カーボンニュートラル公認ファシリテーター」資格を取得。気候変動の与える影響について考えるきっかけとなるワークショップを、学生や役場職員に向けて行っています。
「3772」「1.5」「8.1」
今回は小学生から70代まで幅広い世代の方に参加いただきました。
まずはアイスブレイクとして、「朝ごはんは何を食べたか」「この場までの移動手段」この2つの質問を絵で表現し、シェアしていただきました。さて、この問いのわけとは?これは後ほど明らかになります。
続いて、松江さんからは「今日覚えてほしい3つの数字」を提示していただきました。それは、
「3772」「1.5」「8.1」
という数字です。
これら数字を頭の隅において、「海洋プラスチック」や「海の酸性化」、絶滅が危惧されている動植物たち、温暖化についてなど、私たちが住む地球が直面している問題について学んでいきます。これまでもなんとなく耳にしていたことだとは思いますが、データで示されるとより深刻さを感じますね・・。
筆者が印象に残ったのは下の図。

これは1863年から2023年までの気温の変化を表しており、年間平均気温が平年より低ければ青色、平年より高ければ赤色で示されています。見た目は美しい模様ですが、気温の上昇をまざまざと感じるアート表現です。
講座の途中で、ちょっと一休み。 幅広い世代が参加していることを活かし、「昔の夏の思い出」を語り合う時間を設けました。 「クーラーがなくても涼しかった」「夜はちょっと寒いくらいだった」など、昔懐かしい夏の風景が語られる中、今の夏が当たり前の若い世代からは驚きの声が上がっていました。 北海道の気候の変化を、世代を超えて実感するひとときとなりました。

さて、冒頭に出た2つの質問。「朝ごはんは何を食べましたか」「会場までどうやってきましたか」その答えを思い出していただきました。例えば「朝ごはん」について、今日食べたものはどこからどうやってきたのかを考えてみる。生産地から食卓に届くまで温室効果ガスの排出量は変わっていきますね。私たちの日々の行動・選択一つ一つは小さなものだけど、地球環境とつながっている。日々の行動を振り返ったうえで、「生活の中でできることはなんだろう?」「地域のお野菜を食べたら環境負荷が小さそう!」といったディスカッション・アイデアが生まれた時間でした。
※「3772」「1.5」「8.1」の数字については以下の通り。
「3772」: 日本で絶滅が危惧されている動植物の種類数
「1.5」: パリ協定で示された、産業革命以前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力をするという目標
「8.1」:現在の海水の酸性の強さがph8.1で弱アルカリ性。二酸化炭素が今後さらに溶けて酸性側に寄っていくと、海洋生物の成長に悪影響を及ぼす
環境に思いを馳せながら
自然環境の変化と、私たちとのつながりを学んだところで、後半はグラスガーデンづくりを行いました。中に入れる動物のフィギュアは「循環ガチャ(※)」を回してゲット。カプセルの中には、絶滅が危惧されている動物たちが入っています。また、グラスガーデンに入れる砂はサンゴから作られたもの。気候変動によってその命が脅かされている動物たちやサンゴに思いを馳せながら、自分なりにグラスガーデンをつくっていきました。
グラスガーデンに使用した植物(エアプランツ)は定期的に水に浸すだけでOK。家の見えるところに飾って、地球環境について日常的に考えるきっかけとなれば良いな!と思います。
※循環ガチャ:コインの代わりにペットボトルキャップを入れて遊ぶことができる、資源の循環を楽しく体験できるガチャガチャ」


わたしたちは地球の一部
ワークショップの最後には、参加者から「勉強になりつつ、楽しいものづくりができました」「SDGsをわかりやすく学べました。身近なところから実践していきたいです。」といった声が寄せられました。このイベントを通じて、地球規模の問題が私たちの日常と密接に結びついていることを実感できたことと思います。グラスガーデンを家に飾ることで、日々の生活の中でもSDGsを意識するきっかけとなれば幸いです。今後も、こうした取り組みを通じて、持続可能な未来を共に考えていきたいですね。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
スコラでは、今後も地域住民の学びと交流を促進するイベントを企画していきます。ぜひご期待ください!




